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中小企業でもテレワーク、長期育休、副業解禁はできるのか?働き方改革を実現した企業の取り組みとは

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ライフスタイルやワークスタイルの多様化に伴い、「社員全員が決められた時間に出社し、ひとつのオフィスで仕事をする」という従来型の働き方は、過去のものとなりつつあります。特にここ数年は政府主導の労働改革により、時間や場所にとらわれない働き方がますます注目を集めるようになってきました。

しかし、中小企業ではなかなか実現が難しいという声も聞こえます。最近では業務の効率化によって残業を削減し、社員の副業を推進する動きもありますが、こうした新しい働き方を実際に取り入れ、成功している会社はあるのでしょうか。

そのひとつが、東京都内でIT関連事業を展開する株式会社ダンクソフト(東京都中央区)です。同社は全国に8つのサテライトオフィスを設置し、全社的にテレワークを推進。先駆的な取り組みが評価され、2017年度東京都の「東京ライフ・ワーク・バランス認定企業」にも選定されました。

労働環境の改善にかけられるコストが限られる中、中小企業はどのように「働き方改革」を進めていけばいいのでしょうか。代表取締役の星野晃一郎さんと同社企画チームの衣笠純子さん、ダイバーシティ推進マネージャーの中香織さんに伺ってきました。

株式会社ダンクソフト
1983年創業。企業の業務システムの改善を中心に、ワークライフバランス・ペーパーレス・キャッシュレスを実現するソリューションを提供。企業向けの大規模Webサイトの構築・運用に加え、アプリ開発なども手がける。全国に8拠点のサテライトオフィスをもち、地方の雇用創出や課題解決に貢献する。時代に即した労働環境改善への取り組みが評価され、2011年と2017年の二度にわたり、「東京ライフ・ワーク・バランス認定企業」に選出された。

いつでもどこでも“出社”できるシステム「バーチャル本社」

「中さん、本日はよろしくお願いいたします」

取材の開始とともに、社員の中さんに笑顔で挨拶をしました。といっても、中さんは取材場所にいるわけではありません。「バーチャル本社」を使ってモニター越しに“同席”しているのです。

「バーチャル本社」とは、Skypeのビジネス版を使ったネット上の会議室のこと。基本的にSkypeは常時起動していて、ダンクソフトではそこに参加することを「出社」と呼んでいます。

社員の中さんはWeb越しの参加ながら、対面で話しているようなリアルさ

社員の中さんはWeb越しの参加ながら、対面で話しているようなリアルさ

衣笠:いつも顔が見えていて、声がけすればレスポンスもしてくれます。だから、顔を合わせて仕事をしているのと同じなんですね。

コミュニケーションの密度が高いので、Web越しだからといって仕事のやりにくさを感じることもないそうです。

対面で取材に応じてくださった、企画グループの衣笠さん

対面で取材に応じてくださった、企画グループの衣笠さん

勤務時間の管理には、Outlookから日報を書き出す「日報かんり」というシステムが使われます。その名のとおり、1日の業務内容を入力する仕組みで、これがタイムカードの打刻代わりになります。当日だけでなく、その先の予定も入力できるので、「この人、明日は忙しそうだな」と他の社員の状況を確認することもできます。

このようなテレワークの仕組みは、地方に住む人たちの間にも広まっています。これによって、プライベートの事情などで地方に移住する社員も、キャリアを中断せずに済むようになりました。現在、徳島県、栃木県、高知県、北海道、岡山県、山口県にある8つのサテライトオフィスも、こうした地方在住者の働きやすさに大きく貢献しています。

高知スマートオフィスの内観。白を基調とした清潔感ある空間だ

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徳島スマートオフィスの内観。木の質感がおしゃれ

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働き方改革で気になるコスト「ICTの進歩でプラスアルファの出費はほとんどない」

オフィスの設置場所は、社員の希望に合わせて決定されます。「働きたい人がいるならば、そこにオフィスをつくりたい」。そうした星野社長の思いが、現在の体制を形づくってきました。

星野:サテライトオフィスにはもちろん家賃がかかっていますが、採用にかかるコストに比べれば、気になりませんでした。また、特に女性には、通勤は無理でも在宅なら仕事ができるという人もたくさんいます。今はリモートでできない仕事のほうが少ない。こうした優秀な方々を雇えると考えれば、費用対効果はかなりよいと考えています。

働き方改革にはそれ相応のコストが必要だと考えてしまいがちですが、星野社長によると、追加の出費はほとんどなかったそうです。パソコンはもともと業務で使用しているものを使い、システムにはOutlookSkypeなどの既成サービスを使用しました。ICTInformation and Comunicaion Technology「情報通信技術」)の進歩により、コストいらずの「働き方改革」が可能になったのです。

サテライトオフィスの増加に伴い、東京で勤務していた社員が地方に行く機会も増えました。地方からの視点による気づきも増え、日ごろの提案もより新鮮なものになったそうです。地方の課題をICTで解決したいという社員の声も多くなりました。

また、地方での採用も増え、徳島だけでも2012年~2018年の6年間で6人の社員が入社することに。テレワークの浸透で出産・育児をしながら仕事を続けられるようになり、社員のお子さんも同時期内に6人増加したそうです。

社員の「不満」は職場環境を見なおす最大のヒント

このように、最先端の働き方を実践しているダンクソフト。しかし、こうした職場環境が創業当初からのものだったのかというと、決してそうではありませんでした。

星野:以前のダンクソフトは、長期休暇を取る人が年に数人というレベルで、よい職場環境とは言えませんでした。転機になったのは、2011年に起きた東日本大震災です。震災をきっかけに自分の人生を見つめなおす人が増え、仕事だけじゃなくて自分の人生も大事だね、という空気になってきた。それが働き方への関心につながったと思うんです。

私たちはクリエイティビティが大事な仕事をしています。頭の中だけで仕事が完結するから、極端な話、会議に出ているけれどもまったく別のことを考えている、ということだってできてしまいますよね。

だからこそ、本質的に大事なのは労務管理ではなく、社員のモチベーションを上げることだと考えるようになりました。これを追求した結果、たどりついたのが「社員が働きやすい環境を整える」という答えでした。

創業当初からダンクソフトを率いる星野社長

創業当初からダンクソフトを率いる星野社長

星野社長はまず、当時はデザイナー職だった中さんに「社員が働きやすいように、就業規則を新しく作ってください」とお願いしました。同時に若手社員から日ごろの不満を聞き出し、現状にそぐわない就業規則をひとつひとつ見直していきました。このときダンクソフトは創業20年目。20年もの間、変わることがなかった就業規則が、社員の手によって変わっていく。従業員本位の社風へと舵を切ったダンクソフトを象徴する、記念すべき瞬間でした。

星野:会社への不満って、一般的には言っても何も変わらないことのほうが多いと思うんです。当社では「意見を言えば変わるんだ」という認識を持ってもらいたかった。私が決めたことに社員が従うという形では、本当に働きやすい会社にはなりません。社員ひとりひとりが仕組みづくりに参加できるよう、いろいろと考えました。

社員からの提案はすべて星野社長が確認するものの、基本的には採用することがほとんどだといいます。「まずはやってみて、効果がなければ元に戻せばいいから」(星野社長)というのがその理由です。妥当な提案ならどんどん受け入れてもらえるとあって、社員からは積極的に提案が寄せられるようになりました。

:見直し前の就業規則には、育児休暇の項目がありませんでしたので、私自身が育児休暇を取りたくて提案をしました。育児休暇制度ができたおかげで、3年の育児休暇を取得できました。仕組みの変更に従うのではなく、社員の希望に沿って仕組みが変わるという流れなので、違和感や戸惑いもほとんどありませんでした。

社員が副業目的でサテライトオフィスを使うことを許可

ダンクソフトはユーザー企業向けのシステム開発事業を展開していますが、自社で使うシステムの開発も手がけています。こうした自社開発のシステムを使うことによって、業務の効率化を実現しています。さらに、データでのやりとりを徹底することで、ペーパーレス化も実現。システムが整って総務、経理、人事などの本来業務以外はアウトソーシングできるようになり、人件費も削減できました。

ペーパーレス化は、オフィススペースの有効活用にもつながります。紙を減らすだけで、オフィスのスペースは3分の2ほどになるといわれています。実際にダンクソフトでは、紙の占有面積を1平方メートル以下に抑えることで、広々としたオフィス空間を実現しています。

業務が効率化されれば、社員が副業に取り組む時間も確保できます。ダンクソフトではサテライトオフィスを副業目的で使うことを許可するなど、社員の副業を奨励しています。その一例が、ダンクソフトの社員である酒井啓之さんが運営するアートスペース「GALLERY心(しん)」です。

GALLERY心の内観。和の世界観が生きた空間に、クリエイティビティが刺激されそう

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酒井:副業は収入のためだけではなく、本業では得られない経験や環境を、本業に生かすことができます。ギャラリーを自社の製品の体験会や働き方について考えるイベントの会場として活用するなど、ダンクソフトにも貢献できていると思っています。

このような柔軟な働き方を、会社が制度として推奨してくださっていることで、「挑戦してもいいんだ」という気持ちになりました。働き方の選択肢が増えたことが、安心感にもつながりました。

星野:(社員が)運営者側に回ることで、普段の業務とは違った気づきがあると思うんです。その刺激が本業に生きてくるというのは、いろいろな社員を見ていて実感しています。

イベントの開催は運営者となる社員自身が周知し、当人同士が了承していれば、イベント当日にほかの社員がサテライトオフィスを使用することもあります。そのため、スケジュールがバッティングするなどのトラブルは、今のところないそうです。

中小企業にも働き方改革の波は確実にやってくる

テレワークの普及、社員目線での就業規則改善、副業の奨励――。星野社長はなぜこれほどまでに貪欲に、働き方を変えようとしてきたのでしょうか。

星野:現時点では働き方改革で指導を受けるのは大企業だけ、というイメージがあるかもしれません。しかし今後510年のうちには、中小規模の事業所にも確実に波がやってきます。今取り組みをはじめない企業はコミュニティを維持できず、生き残っていけなくなる。それなら、できるだけ早くスタートしたほうがいいのではないでしょうか。

働き方改革は、経営者と働く人が別々の方向を向いていては、成し遂げることはできません。両者がコミットし合いながら、無理のない範囲で歩み寄って進めていくのがベストです。誰もが効率よく働ける仕組みを、今から整えていくといいと思います。

一部の人だけが会社を「変えていく」のではなく、全社員が一緒に前進することで、自然と職場環境が「変わっていく」。これまでダンクソフトが行ってきた取り組みからは、そうした姿勢が伺えました。

働き方改革は、一時的なイベントで終わっては意味がありません。同社の取り組みを参考に、持続可能な職場環境のあり方を探ってみてはいかがでしょうか。

弥生マルシェ編集部
著者:弥生マルシェ編集部
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