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ぶどう農家がなぜドローンを飛ばすのか?IoTを使った「産地を守るための挑戦」

ぶどう農家がなぜドローンを飛ばすのか? 産地を守るための挑戦


人間の力が及ばない自然が相手で、機械には置き換えられない手作業も多く、なんとなく「IoT」とは縁遠いように見える農業。しかしながら、山梨県韮崎市上ノ山でぶどう農家を営む岩下忠士さんと、約3年前にぶどう栽培とワイン醸造を始めた安部正彦さんは、ドローンやスマートフォンアプリを使った新しいぶどう栽培方法を、JAIT企業、株式会社山梨フジカラー、さらには大学と連携して研究しています。

連載第1回目IoTって結局、何?どう使うの?スモールビジネスの活用事例を聞いた!」では、中小企業でのIoT導入事例について紹介しましたが、今回の記事では、なぜぶどう栽培にIoTソリューションの代表格であるドローンを使おうと考えたのか、そして新しい栽培方法によってどんなことが可能になるのか、岩下さんと安部さんにお話しいただきました。

お話を伺った方:岩下忠士氏(左)、安部正彦氏(右)

お話を伺った方:岩下忠士氏(左)、安部正彦氏(右)

岩下忠士氏

建築関係の会社を経営した後、13年前からぶどう農家に。岩下農園の経営と並行し、ぶどう栽培のサポートツールの開発など、新しい栽培方法を模索している。

安部正彦氏

電機メーカー勤務を経て山梨大学でワイン科学を修了した後、2014年に園を引き継いだ比較的新しい生産者。

寒い冬の時期、ぶどう農家がドローンを飛ばすわけ

ぶどうの収穫が終わり、冬が訪れて葉が枯れるころ、山梨県韮崎市上ノ山のぶどう園の上空では、最新のカメラとセンサーを搭載したドローンが飛んでいます。これはできるだけ高いところから畑全体を撮影し、栽培に必要なデータを取得するため。

ぶどう園を上空から撮影した画像は、枝剪定(えだせんてい)という作業のために使われます。枝剪定とは、ぶどうの木の不要な枝を切る作業のこと。ぶどうに効率よく栄養が行き渡るように、全体のバランスを見ながら、切る枝と、残す枝を決めていきます。ぶどうの収穫量と品質に関わる重要な工程です。

ドローンでぶどう園を上から撮影することで、ぶどうの木の枝がどのように伸びているのか確認する

ドローンでぶどう園を上から撮影することで、ぶどうの木の枝がどのように伸びているのか確認する


「農園にあるぶどうの木は、人の手が届く高さの棚に、つる状の枝を巻きつけることによって作業がしやすくなっています。そのため木の下からでは、ごく一部の枝しか見られません。どうしたら一度に広い範囲を見られるのか考えて、これまで屋根や電信柱に登って見ようとしたりしていました。それでも、広い範囲は見ることができないので、ドローンで撮影しているのです」(岩下さん)

枝剪定はぶどうの木が活動を止める冬の時期にしかできません。広い農園では何千本もの木の枝を切るので、作業量も膨大です。収穫量や品質に関わる部分なので、初心者はどこを切るのか迷いますが、もたもたしていると、枝を切ったときに栄養分が切り口から逃げてしまいます。つまり時間との戦いなのです。

厳寒期の限られた期間内に剪定を終わらせなくてはならない。圃場が広いので迷っている時間はない

厳寒期の限られた期間内に剪定を終わらせなくてはならない。圃場が広いので迷っている時間はない

ドローンでぶどう園を撮影すると、枝剪定はどう変わる?

初心者には難しい枝剪定ですが、設計図があれば作業をするうえでの迷いを減らすことができます。ドローンで撮影した画像は、その設計図の元になるものです。

「これまで初心者は、熟練者やJAの指導員にぶどう畑まで来てもらい、そこで指導を仰いでいました。しかし、ドローンを使って取得した画像があれば、ぶどう畑まで行かなくても、どの枝を切ればいいのか教えてもらうことができます。悪天候で作業ができないときでも、作業が終わって日が落ちた後でも、どの枝を切るのか決めることができる、というわけです」(岩下さん)

ドローンの画像を印刷したもの。これを見ながら剪定の指導を受けることができる

ドローンの画像を印刷したもの。これを見ながら剪定の指導を受けることができる


ただし、ドローンによる撮影もまだまだ課題があります。たとえば、ぶどう畑の土の色と、枝の色が似ているので、判別がしにくいこと。青いビニールシートを下に敷いたり、土に水をまいたりして、枝が判別できるようにしたり、ドローンのカメラの解像度を上げるなど、工夫を重ねている最中だと岩下さんは話します。

「ぶどうの房ができる枝の数をカウントできるくらいまで解像度が上がれば、ぶどう園のおおよその収量を予測できる可能性があります。そうなれば、ぶどう園を始めたばかりの新人さんも、生活の見通しが立ちますよね。私たちは、この地域でぶどう園をやりたいという新人さんを逃がしたくないんです。お金が稼げなくて辞めちゃったらかわいそうですし、この地域にぜひ定着してほしい。山梨県全体を見ても、ぶどう園の担い手は減っています。これは産地を守るための挑戦なのです」

企業や大学も応援!2軒の農家の挑戦が共感を呼んだ

ドローンで空から撮影することになったのは、岩下さんの元に新人のぶどう農家である安部さんが、栽培について相談しに行ったことがきっかけでした。

「せっかく作ったぶどうの色やハリが良くなかったりして、これはどうしたものかと思ったんです。そこで、隣でぶどう園を営んでいる岩下さんに相談に行きました」と安部さんは当時を振り返ります。

安部正彦氏  電機メーカー勤務を経て山梨大学でワイン科学を修了した後、2014年に園を引き継いだ比較的新しい生産者。

 

会社員を辞めた後、山梨大学でぶどう栽培と醸造を学んだ安部さん。最初はうまくぶどうを栽培できませんでした。「そのときは、安部さんにアドバイスしようにも、感覚的なことしか伝えられなかったんです。勘と経験に頼るだけではダメで、新しく就農した人にもぶどう栽培の技術を伝えていけるように、仕組みを変えていかなくてはいけないと思いました。それがドローンの活用につながっていったのです」(岩下さん)

最初からドローンが使えるという確信はありませんでした。1機で数十万円するものですから、大きな投資です。それでも、岩下さんはドローン購入を即決。ぶどう栽培にドローンを活用するという新しい取り組みは珍しいので、メディアからも注目され、それが新しい展開へとつながっていきました。テレビ取材に来ていた撮影関係の会社の方に操縦技術を教えてもらったり、データの取得と解析面などを通信会社や山梨フジカラーにサポートしてもらったりすることも。

「リモートセンシングやAIの研究をしている東海大学の森田准教授にも、面白い取り組みということで協力していただいています。最初、岩下さんが使えるかどうかわからないドローンを購入したのには驚きました。すごい賭けをする人だなと。でも、そのときドローンを購入したから今があるのだと思います」(安部さん)

2人のぶどう農家が始めた産地を守るための取り組みは今、JAや企業、大学を巻き込み、さらに影響の輪を広げている最中です。


従来のぶどう栽培のやり方を踏襲するのではなく、新しいやり方を模索し、後進たちにわかりやすく伝えるようにしたい。そんな思いがきっかけで始まった2人のぶどう農家の取り組みは、産地を守るための挑戦へと発展しています。

次回は、ドローンによるぶどう農園全体の「見える化」にとどまらない、IoTを用いたぶどう栽培サポートツールの展開について紹介します。

 

連載「中小企業のIoT活用最前線」

連載第1回「IoTって結局、何?どう使うの?スモールビジネスの活用事例を聞いた!」

連載第2回「ぶどう農家がなぜドローンを飛ばすのか?IoTを使った、産地を守るための挑戦」

連載第3回「勘と経験だけに頼らないぶどう栽培を!IoTによる匠の技『見える化』プロジェクト」

 

弥生マルシェ編集部
著者:弥生マルシェ編集部
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