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事業承継どうする?親子ミーティングのすすめ-中小企業お悩み相談室第4回目:経営者編-

事業承継どうする?親子ミーティングのすすめ-中小企業お悩み相談室:経営者編②-

著者:長野 恭彦 株式会社スコラ・コンサルト プロセスデザイナー

「中小企業お悩み相談室」では、中小企業や小規模事業者のような「小さな組織」によく見られる実際の悩み事をピックアップ。組織風土改革のパイオニアとして30年以上の実績を持つ「株式会社スコラ・コンサルト」が回答します。

前回は、採用に課題を抱える中小企業のお悩みに回答しました。

新卒も中途も採用が上手くいかない!-中小企業お悩み相談室第2回目:経営者編-

今回は、成功している企業がいつかぶつかる壁「事業承継」についてのお悩みに回答します。

Q.息子の本音が分からず、事業を託していいものか不安

私は40年前に会社を創業しました。当初は毎月、日々の資金繰りに肝を冷やしながら仕事をしていましたが、いいお客さまにも恵まれ、それなりにやり遂げた感慨があります。

そんな私も70歳を過ぎ、「経営の承継」という最後の一仕事が残っていることに気づきました。私には38歳の息子と35歳の娘がいて、幸い息子は会社を継ぐ気があるようなので、8年前に入社させ、営業と製造の前線で仕事をさせてきました。今は役員として営業部門を任せています。

しかし、どうも私から見ると視野が狭くて目の前のことしか見えず、いずれは経営を担う立場の割には熱意も今ひとつで、頼りなく見えてしまいます。親の会社を継ぐにしても気持ちは創業者のつもりでいてほしい。会社を預かる立場での気構えや経験などについても話したいのですが、息子はあまり積極的に話をしようとしません。どうすれば息子に私の思いを伝え、息子のやる気を促すことができるでしょうか?

A.息子への承継は最も難易度が高いもの。時間をかけて話し合いを積み重ねましょう

質問者さまは、すでに息子への承継を選ばれているようですが、ここで基本的なことを押さえておきましょう。

まず事業承継の対象者には大きく3つの種類があります。

1つ目は、「子どもへの承継」で親族も含まれます。2つ目が「現社員への承継」です。3つ目が「社外からしかるべき人物を招へいすることによる承継」です。知人の紹介やヘッドハンティング、M&Aなどいくつか手段があります。

したがって、会社の承継については、最初から選択肢を狭く考えるのは得策ではありません。経営者としての人格・能力を持っている、または可能性がある人物を選ぶのが合理的です。その一方で、どうせなら自身の子どもに継がせたい、という親の気持ちはあってしかるべきでしょう。

また承継には、「事業」と「財産」の2種類があります。

財産の承継は、できるだけ損失を最小化する手段を講じるべきですが、事業の承継については、「何のために承継するのか?」という問いに自分なりの答えを出して、思いを明らかにすることが大切です

新事業に打って出て会社を急成長させたいのか? それとも本業を革新しながら長く続く会社にしたいのか? その答えによって、選択肢も変わってきます。その思いが実現されるかどうかは後継者にかかっていますが、少なくとも、思いをしっかりと繋いで悔いのない承継をしたいものです。

「何のために承継するのか」という思いを伝えるにあたって、現社員や第三者への承継とは比べものにならないほど難しいのが、子どもに伝えることです。多くの場合、「父親とは話もしたくない!」と語る子ども、特に息子さんは少なくないからです。そこで、私が質問者の方と同じ悩みをお持ちの方にオススメしたいのが「親子ミーティング」です。

息子への承継は最も難易度が高いもの。時間をかけて話し合いを積み重ねましょう

なぜ子どもは父親が苦手なのか

私は3年前から、長野県の駒ヶ根市で、市役所と商工会議所が後援する任意団体である「テクノネット駒ヶ根」の事業の1つである「事業承継研究会」を支援させていただいています。そこでは、承継者である子どもが15名ほど集まって、将来社長になったときのために「自分は何のために経営をするのか?」という大きなテーマを自分に問う対話型のミーティングを実施しています。

「自社の強みは何か? 将来どうしたいか?」「自分にとって社員とはどういう存在か?」など、いろいろな切り口から自由な議論をし、メンバーは多くの気づきを持って帰ります。

3年前、第1回の会合に集まったメンバーのうち、父親と普通に会話ができているメンバーは、たったの1人で、ほとんどは「父親と話したくない」と明言しました。

話したくない理由は何でしょうか? これについても共通していて、何かしら事業に関する提案はもちろん、何か話をしようものなら「頭ごなしに否定される」というのが多くの理由です。

この「頭ごなしに否定される」という現実は、親子関係でなくても、会社など組織の上司と部下、学校における部活のコーチと学生でも同じです。ただし、子どもにとって親というのは、幼少の頃から逃げることができない存在であり、一方で、いつかは超えるべき身近なライバルとしての対象になります。近しい存在だけにその対抗心や嫌悪感は、ライバルが他人の場合と比べて何倍にもなります。

しかし、親から見ると、子どもはいつまで経っても子ども。ついつい欠点ばかりが目につき、「引き算で見て」足りないところを指摘したり、教えたりして埋めたくなるものです。ましてや、経営者という観点で見るとしたら、欠点だらけもいいところ。でも、それは当たり前でしょう。社長をやったことがないのですから。いずれにしろ、子どもは煙たい存在である親が苦手です。ここが子どもへの承継のスタート地点であると考えておくことが大切です。


実は、子どもは親と話したがっている

口では「親父が苦手だ」とはいうものの、親を間近に見てきて、尊敬している部分もあります。心のどこかで話をしたいと思っているのも事実です。

前述の駒ヶ根市の「事業承継研究会」では、経営者から承継者へ承継してほしいものを伝えるために、1人の参加者の父親に話をしてもらうことを企画しました。内容は、創業時の思いや苦労、事業が軌道に乗った転換点とその背景、長年の経営経験で得た教訓などです。

この親子も例に漏れず、父親は子どもの話を頭ごなしに否定し、子どもは親父とは口も聞きたくないと言い続けている間柄です。おそらく当の息子は話を聞きたくないかもしれないけれども、他の参加者にとっては地元の大先輩社長の話ですから、皆と一緒ならば素直に聴くことができるだろうと、私は仮説を持っていました。

ところが当日、なんと息子はビデオカメラを持参してきたのです。親父の話す姿をビデオに収めたいということでした。私だけでなく参加者の皆さんも予想外の行動に驚いていました。「いやあ、皆の前なら素直に話すだろうから、記録するチャンスだと思っただけですよ」と息子はうそぶいていました。これを愛情の現れ以外の何といえるでしょうか。

親と子は最も近い存在ですが、口に出さなくても分かっているようで、お互いに分かり得ない部分を持っているものです。だからこそ事業を承継するなら、言葉を介して分かり合うことが何よりも大切です。

この親子ミーティングは、今までの私の経験でいえば、息子さんの申し出を父親が受け入れて始めるのが通常です。それは子どもの側にニーズがあるからです。とはいえ、子どもにとっては、父親から申し出てくれる方が嬉しいのは確かです。

次に、「親子ミーティング」を成功させるための6つのコツをお伝えしますので、このコツを参考に、ぜひ勇気を出してあなたの方からミーティングを切り出してみてください。

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親子で前向きに話し合うための6つのコツ

参考にしたいのは、長野県伊那市にある社員数30名、創業70年になる洋菓子屋の菓匠Shimizuさんの例、現社長の清水慎一さんと先代の紀光さんとで実施されている親子ミーティングです。

三代目の慎一さんはフランスでの修行を終えて2001年に帰国、父親にはまねのできないケーキを次々につくり、売れ行きも良く鼻高々でした。それでも、父親は息子の経営者としての危うさを見抜いていて、シビアなアドバイスを繰り返します。慎一さんにとってはそれが煩わしく、奥さんや祖母にも愚痴をこぼしました。

ところが、2人もまた彼に愛情あふれる厳しい言葉をかけます。祖母からは「つまらないね、あんたの人生は」。奥さんからは「あなたは誰のためにケーキをつくってるの?」。共感してくれるどころか、追い打ちをかけられた格好になった慎一さんは、腹を立てながらも、その言葉の意味を考えました。

その結果、目立つことしか考えず独りよがりで未熟な自分に気づき、お客さまのためにケーキをつくろうと決意を改めたのです。そして、父の思いを受け継ぎながら店づくりをするため、親子ミーティングを実施したのです。

以下に、そのときの清水親子による親子ミーティングの成功ポイントを挙げてみます。 

1.決して2人ではやらず、第三者に入ってもらう

親子に限りませんが、2人での対話は意見が異なった場合に逃げ道がなくなり、感情的なしこりが残るリスクが大きくなります。そのリスクを小さくして、かつより前向きな意見に集約するには、異なる視点から三番目の意見が出せる「第三者」の存在が欠かせません。また、第三者が気持ちを和ませる合いの手を入れることで、緊張関係を解くことができます。

これは健全な対話にとって大事なことです。ちなみに、菓匠Shimizuさんでは、母親が第三者として入っていました。 

2.息子の話を聴くことを大切にする

当然、子どもに言いたいことは山のようにあるでしょうが、ここは我慢して「聴く」ことに時間を割きましょう。

ケーキをつくるスキルやITリテラシーなど、たとえ子どもに自分より優れた部分があろうとも、経営者としては未熟な存在です。実は子どもも口には出さないまでも、そんなことは百も承知なのです。

引き算で足りないところ、未熟さを指摘するのではなく、これからの成長を楽しみにしながら、子どもの関心の在りかや強みを見つけるつもりで聴くことに徹すればいいでしょう。「親父はどう思う?」という問いが子どもから引き出せれば、しめたものです。

3.未来を語り合う

話し合いの中心テーマは、「この会社、この店をどんな存在にしたいのか?」「そのために、5年後は、10年後はどんな状況にしたいか?」「そのために今何を始めるか?」というものです。もちろん、今すぐに解決しなければならないことを話し合って決めることも多々ありますが、それは日常の経営会議で決めればいいでしょう。 

4.短時間でもいいので継続させる

清水親子は、1週間に1度、1時間と決めてミーティングをしていました。お客さまの好みや売り場・売れ筋の状況、スタッフの気持ちや取引先の状況は、日々刻々と変化します。ありたい未来を実現するためには、そうした日々の変化を共有しながら、それと並行して、未来のためには今何をしなければならないかを考え、実行していくことが肝心です。

5.振り返るときには必ず「良かったこと」を出し合う

実行したことを振り返って評価し、次の策を考えることは、ありたい姿に近づくためには大事な仕事です。ここで気をつけたいのは、うまくいかなかったこと、失敗したことばかりに焦点があたってしまうことです。

それも大事ですが、うまくいったことの理由を明らかにし、うまくいくことを再生産する方が近道です。自分たちの得意技、強みを再生産し究めることによって、他社がまねのできない独自性を築くことにつながります。

6.ホンネを出し合い、互いの価値観を理解する

ホンネと言っても、感情をさらけ出すのではなく、自分の意見をさらけ出すという意味です。ホンネを出し合う意味は2つあります。1つは、より良い結論に高めるため。もう1つは、意見の背景にある価値観を理解し合うためです。

人の持つ価値観に「正しい、正しくない」という判断はありません。理解し合うことでお互いの価値観の違いが見えることが肝です。例えば「考える仕事は社長、手足を動かすのは社員」という価値観に対して、「考えて意見を言う機会においては社長も社員も平等」という具合です。

こうした場合、それぞれの価値観の違いを尊重しつつも、経営に及ぼす影響を議論し、最終的にはどのような価値観を基盤にして経営していくかを決めなければなりません。それをはっきりさせるのは、「誰が決めるか」だけです。現社長である自分なのか、未来のために子どもに決めさせるのか。それはあなたが決断すべきです。

親子で前向きに話し合うための6つのコツ

最後に

冒頭で、「事業の承継については、『何のために承継するのか?』という問いに自分なりの答えを出して、思いを明らかにすることが大切です」と書きました。

この問いに関して思い出されるのが、脱・産廃屋を掲げて奮闘する石坂産業株式会社の石坂典子代表取締役のお話です。お父さんが立ち上げた産廃事業が周辺住民の健康被害の訴えにさらされ存続が危うくなったとき、典子さんは「お父さん、どうしてこの会社をつくったの?」と問いました。

お父さんの答えは「根無し草のような仕事ではなく、地に足の着いた仕事をして、子どもたちにまともな生活をさせてやりたかった」でした。この話を聞いて、典子さんはお父さんが築いた会社を何とかしたいと思い、承継を決意されたとのことです。

このエピソードは「何のための承継か?」について答えになっていないかもしれませんが、会社に対する思いを子どもに伝えるには十分な内容であると思います。「どういう思いで会社をつくったのか?」「どういう思いで会社を続けてきたのか?」「会社を今後どうしたいのか?」。恥ずかしいと思いますが、自分の最後の大仕事ととらえて、過去・現在・未来の出来事と思いを子どもに語ってあげてください。


長野 恭彦(ながの やすひこ)

著者:長野 恭彦(ながの やすひこ)

株式会社スコラ・コンサルト、中堅・中小企業の変革のプロセスデザイナー。個人の生まれや育ちから見えてくる自分軸を核とするリーダーシップの再生と、社員間のタテ・ヨコの関係づくりから生まれるチームワークによる事業やマネジメントの改革を得意とする。現在クライアントに出向中、CCOChief Culture Officer)に挑戦している。著書『オレがやる!「負けないリーダー」の仕事術』

株式会社スコラ・コンサルト
著者:株式会社スコラ・コンサルト
組織風土改革のパイオニアとして企業・公的機関の支援に30年の実績をもち、実践を目的とした〈プロセスデザイン〉という独自の変革手法に特徴がある。「コンサルタントのいないコンサルティング会社」のスタンスを貫き、「プロセスデザイナー」が現地で現場の人たちと一緒に考える伴走型の支援を行う。本音でまじめな話ができる対話の場、職場や立場を離れてフラットな関係で行う「オフサイトミーティング」は、スコラ・コンサルトの代名詞になっている。株式会社スコラ・コンサルト ホームページ。

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