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無意識の心理を利用した「スリーパー効果」で受注獲得!:実践のビジネス心理学①

無意識の心理を利用した「スリーパー効果」で受注獲得!:実践のビジネス心理学①

著者:匠 英一 デジタルハリウッド大学教授、日本ビジネス心理学会副会長

「営業先でなかなかうまく話ができない」

「新商品のパッケージに使う文章が浮かばない」

ビジネスの現場でありがちなこうした悩みは、心理学を応用することで解決するかもしれません。本連載では、日本ビジネス心理学会の副会長を務める匠 英一氏が、明日からでも使える心理学を用いたノウハウを、こっそりと伝授します。

案件をバンバン獲得!?営業マンに役立つ「スリーパー効果」とは?

自分が考えぬいた提案が、営業相手や上司になかなか理解されずに通らない。こんな経験が、サラリーマンであれば誰しもあるものです。

こんなときに役立つのが「スリーパー効果」という無意識の心理の働きです。これは当初は信頼されていない人の情報であっても、時間が経つにつれて誰が言ったかという「人の情報」が受け手側の記憶から消えてしまい、その「言った内容の記憶だけ」が残るというものです。

といっても少し分かりにくいので、私がIT企業の新規事業を担当していた頃に、上司に新しい企画を持ちかけたときの事例で説明することにしましょう。

CRM(顧客関係管理)という用語は、今でこそ一般的に知られるようになりましたが、90年代の後半頃までは、まだほとんど知られていませんでした。当時の会社はネットワーク機器の販売を行っており、CRMとは縁のないセキュリティ分野をメインとしていました。

そんな中、私は社長と月に数回ある打ち合わせの合間に、「CRMがあると営業も楽なんですがね。○○の部門はそれで利益が2倍以上になったらしいですよ」というように、ほんの一言程度ですが社長に耳に入れるようにしていました。その時点では、社長はフーンという程度の反応でした。しかしそこは気にせず、また数週間後に「顧客のクレームをもっと活かすような仕組みがあるとよいのですがね、CRMは……」と新聞の記事などを紹介しながら話していたわけです。

そんな程度のことで本当に効果があるのか疑問かもしれません。ですが、ここが「スリーパー効果」の“Sleep(眠る)”という意味のおもしろいところです。

半年ほどが過ぎ、社長が長期の海外出張から帰ってきたタイミングです。突然社長室に呼ばれて、新しい業界団体を立ち上げるということになったのです。社長自身が考えたアイディアだというのですが、実際は私が社長に耳打ちしていたCRMをどうビジネスにするかという内容だったのです。

早速社長の指示により、自分が以前から描いていた企画案をまとめました。もちろん、社長が考えての事業ですので、ほかの役員も反対できません。私の思惑はほぼそのまま通るようなかたちで、翌年には私がその業界団体の事務局長を兼務することになりました。

案件をバンバン獲得!?営業マンに役立つ「スリーパー効果」とは?

「スリーパー効果」を効果的にする3つのポイント

この私の事例はたまたまだったのでしょうか? そうではありません。私自身が仕掛けた業界団体づくりの企画は述べ15件以上にのぼります。そして、程度の差はあるにしろ、すべて「スリーパー効果」の働きを活かしてきたものでした。

私は現在も日本ビジネス心理学会の副会長をして、心理の検定資格の普及に取り組んでいます。心理学者なのにと思われるかもしれませんが、「ビジネス心理学」は実践の“心の科学”です。実践を通じて現場感覚を理解しながら、その中で人の心の法則性を見つけ応用していくものなのです。

このような視点から、「スリーパー効果」を応用するポイントを挙げておきましょう。

1.記憶の印象をつくるキーワードを入れる

あれこれと多くの情報を詰め込んではいけません。最初はキーワードだけの小出しでよいのです。受け手側の記憶の手がかりとなるキーワードがないと、どんな内容だったか想起できないからです。

そのため、できるだけシンプルにキーワードを中心に繰り返し伝えることがポイントです。私の場合ではCRMの3文字がキーとなっていました。

ただし、雑誌などによく掲載されるような話題にしやすいキーワードがいい場合もあれば、まったく新しくオリジナリティのある造語でいい場合もあります。

いずれにせよ、特にコンセプトのような内容は、詳細なイメージが分かることが大事です。

2.内容が同じであっても表現を変えて語る

内容は同じことであっても、表現は変えて語る方がより説得性が増します。あまり同じことを繰り返すと、受け手側もまたかという否定的な印象になってしまい、効果が薄れてしまいます

語る側は信用されていなくてもよいのです。後で受け手側の記憶から人に関する記憶は薄れてしまうからです。あくまで、与える情報そのものがポジティブな印象として残ることが大事なのです。

「スリーパー効果」を効果的にする3つのポイント

3.受け手側のプライドが高いほど効果的

受け手側が自己の考えに固執しやすいタイプ、つまり自尊心が高い相手の方がより効果的です。

人は自分の考えたことは物事をありのままに見ており、客観的だと思いがちです。これを「ナイーブ・リアリズム」と呼ぶのですが、他者からの影響がどう働いているかを理解するのは実は難しいことなのです。

プライドが高い人は自分が他者から影響を受けたとは思いたくありません。それゆえ提案内容が無意識では良いと思っていても、なかなか賛成してくれません。良いことは自分が考えたことであり、悪い結果になればそれは誰かが言ったことにしておきたいと思うのは誰にでもあることでしょう。

ちなみに、こうしたことを、もし社長本人に指摘したとすればどうなるでしょうか?

これはいけません。あなたが非難されるだけですので、間違っても「それは私が考えた提案ですよ」とは言わないことです(笑)。本当に提案を通したいのなら、むしろ当人が自分で考えたと思ってくれたことを喜ぶべきでしょう。

まとめ

ポイントをまとめると「シンプルなキーワードを」「表現を変えて」「繰り返し話す」ことです。スリーパー効果を使うと、営業や上司などへ何らかの提案を通す際に大きな力となることでしょう。次回からも、こうした実践のビジネス心理学のおもしろさをご紹介していきましょう。


ビジネス心理検定」とは?

ビジネス心理検定マネジメント心理(人事・経営)とマーケティング心理(営業・広告)、コーチング心理(※2018年春開始)の3種類の本格的な検定試験。スマホ動画でも受講可の学習サイトなどを日本ビジネス心理学会が主催。これまで3年間で450人が受験し、うち320名が合格。現在当学会フリー会員を募集中。会員はこれらの専門的な解説をネット上で視聴できる。

匠 英一(たくみ えいいち)
著者:匠 英一(たくみ えいいち)
和歌山市生まれ。東京大学大学院教育学研究科を経て、同大学医学部研究生終了。現在、デジタルハリウッド大学教授、日本ビジネス心理学会副会長、(株)人材研究所顧問研究員。専門は認知行動科学を軸にした人材開発、コーチング、マーケティング。大学教授と兼務しながらコンサル業と「ビジネス心理検定」の普及活動に従事。主著は『ビジネス心理学』『最強の仕事力』『仕事の厄介な問題は心理学で解決できる』など50冊ほどあり。ほかに心理学者としてTVレギュラー出演多数。

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