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【PickUp企業】「片道1時間以上」の案件は大手でもお断り−スズキ機工株式会社①

【PickUp企業】「片道1時間以上」の案件は大手でもお断り−スズキ機工株式会社①

社員わずか16名の産業用自動機メーカーに、年間100社を超える企業が視察に訪れています。その会社の名は「スズキ機工」。1976年に18L缶の製造機械メンテナンス事業からスタートした同社は、食品業界向けの産業用自動機メーカーへと転身し、さらにはテレビでも取り上げられる「絶対に止まらない潤滑剤 LSベルハンマー」をはじめとするヒットメーカーになりました。

今でこそ「中小企業の星」として注目を浴びる同社ですが、今に至るまで幾度も社内外の軋轢、経営危機を乗り越えてきたのだとか。そこで今回は、自ら「弱者の経営戦略」と表現する、「中小企業が危機を切り抜け、飛躍を遂げるためのヒント」を代表取締役の鈴木豊氏に伺いました。

顧客が倒産……収益比95%の主要事業から撤退

国内のみならず海外からも見学依頼が殺到するスズキ機工株式会社。2017年には、人を大切にする経営学会が運営する「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の審査委員会特別賞にも選ばれた企業です。食品業界向け産業用自動機の製造販売を基盤事業とし、奇跡の潤滑剤「LSベルハンマー」などのオリジナル商品でヒットを連発しています。まさに今絶好調の同社ですが、これまでいくつもの危機や失敗を克服してきました。

「技術者の父が18L缶製造装置のメンテナンスで事業を興したのがスズキ機工の始まりです。90年代のバブル崩壊のあおりを受けて、製缶会社が次々と倒産、廃業していきました。事業収益の95%が製缶関連だった当社の業績の落ち込みは激しいものでした」と鈴木社長は当時を振り返ります。

鈴木豊氏。大学卒業後、食品原料商社の営業として活躍。1997年より同社を立て直すために入社し、2007年より代表取締役に就任

鈴木豊氏。大学卒業後、食品原料商社の営業として活躍。1997年より同社を立て直すために入社し、2007年より代表取締役に就任

鈴木社長は大学卒業後、食品原料商社の営業として活躍していましたが、父親の助けになるために退職し、スズキ機工の立て直しに奔走します。

「ありがたいことに前職で厚意にしていただいた食品会社の社長さんが、食品製造装置関係の仕事を紹介してくださいました。機械のことは全く分からない状態でしたが、素人なりに『製缶事業で培った技術を応用できるのではないか』と思っていました。とはいえすぐに結果を出せるわけもありません。失敗も多かったです。それでも粘り強く取り組んだ結果、お客さまからまた次のお客さまを紹介いただくようになり、少しずつ道が開けてきました」

やがて食品製造装置関係の事業割合は拡大。反比例するように製缶関連の事業は縮小し、顧客が次々と倒産・廃業して、やがて売上もほぼゼロになってしまいました。

片道1時間以内の「勝てる」顧客だけに集中

食品業界向けの産業用自動機メーカーへ転身を遂げたスズキ機工ですが、最初の数年は利益を出すのが精一杯という状況だったそうです。

「私自身、かなり忙しく働いていたのですが、会社は全然儲かりませんでした。片道2時間半かけて通っていた顧客が、当社の作成した機械図面だけを盗んで、それを他社に製作させる裏切りにあったことも……。悔しい思いをした帰り道、高速道路で移動しながら気づきました。こんなやり方をしていたら儲かるわけがないと」

取引先まで2時間半かかる場合、行って帰ってくるだけで1日が終わってしまいます。これでは生産性が低く、頻繁に訪問できないため、顧客との関係を深めることも難しくなります。そこで、鈴木社長は顧客リストを見返して、車で片道1時間の範囲の顧客に集中することにしたのです。

「遠方の顧客から手を引くのは勇気がいる決断でした。でも、往復5時間かけて打ち合わせにいくやり方では利益が出るはずがありません。それが車で1時間の範囲だったら、5時間で何倍も仕事ができます。私たちは、わざわざ遠くの勝てない土俵で勝負することをやめたのです。すると驚くような変化がありました」

地域密着型の戦略に切り替えた効果はてきめんで、わずか数カ月で売上が前年比大幅アップ。かつては忙しいのにも関わらず赤字の月もありましたが、利益に関しては月次で100万円は安定的に確保できるほど猛烈な勢いで改善していきました。

「やらないことを決める」。たとえ大手の顧客であっても、片道1時間で行けない場合は丁寧にお断りしていると話す鈴木社長

「やらないことを決める」。たとえ大手の顧客であっても、片道1時間で行けない場合は丁寧にお断りしていると話す鈴木社長

「商売の本質」を突くものだけ事業化。大ヒット商品の誕生へ

スズキ機工は営業エリアを限定することで、安定して利益を出せる体質になりました。しかしながら、限られたエリアで事業展開していると、いずれ飽和状態がやってきます。社員が増え、その家族が増えることを考えれば、会社は成長軌道を描き続けなければなりません。

「会社を成長させるためには新規事業を立ち上げるしかありません。そこで、顧客のニーズを徹底的に吸い上げ、それを丁寧に分析し、新規事業のタネを探しました。ただし、私たちが手掛けるのは、『商売の本質』を突くものだけです」

「商売の本質を突く」とは、例えば、「食べ物のように絶えず消費され、需要があるもの」「携帯キャリアのようにストック型のビジネスの性質を持つもの」などです。それに当てはまるものとして生まれたのが、製造現場に欠かせない消耗品、潤滑剤でした。

顧客のニーズから生まれた潤滑剤LSベルハンマー。今やスズキ機工の看板商品になるまで成長した

顧客のニーズから生まれた潤滑剤LSベルハンマー。今やスズキ機工の看板商品となるまでに成長した

「潤滑剤の性能が低いせいで、部品が焼き付いて何十万円もするスピンドルが壊れてしまうとか、機械の無償修理で何度も訪問しなければならないなど、悩ましい問題がありました。これを何とかしたいと思い、世の中にある潤滑剤を全てといっていいほど研究して、完成させたのが『LSベルハンマー』でした」

LSベルハンマーは産業用自動機のメンテナンスで役立つのはもちろん、バイクやさびだらけの自転車でも効果を発揮します。テレビや雑誌などにも取り上げられて、全国区の商品になりました。

「車で1時間以内の範囲で展開する産業用自動機の事業を、私たちは『マザープロジェクト』と呼んでいます。マザープロジェクトが当社の基盤となり、そこで吸い上げたニーズを新しい事業につなげていく。その結果、右肩上がりの成長曲線を描けるようになりました」

電線が絡む煩わしさから解放する収納ラック「パケットリールシステム」も自社開発のオリジナル製品。専用のボビンで電線を販売しているため、継続的に注文が入る

電線が絡む煩わしさから解放する収納ラック「パケットリールシステム」も自社開発のオリジナル製品。専用のボビンで電線を販売しているため、継続的に注文が入る


先細りしていた製缶関連事業から産業用自動機事業へ転換を図り、さらに営業エリアを絞ることで会社の体質改善を図ったスズキ機工。マザープロジェクトで着実に利益を挙げながら、「商売の本質」を突く新規事業でさらに飛躍しました。

スズキ機工の成長の起爆剤となったのは、事業の先行きへの不安や、顧客の裏切りなど、数々の苦い経験。かつてのスズキ機工のように、苦しい思いをしている中小企業こそ、発想の転換によって飛躍する可能性を秘めているのかもしれません。

次回はスズキ機工の大ヒットを生み出すプロモーション戦略に迫ります。

スズキ機工株式会社

Profile:スズキ機工株式会社

1971年設立。18L缶製造装置のメンテナンスから事業をスタート。製缶機械の開発・販売、製缶プラントの輸出へと業務拡大するも、バブル経済崩壊のあおりを受けて経営危機に。食品業界向けを中心とする産業自動機械事業へ業務転換し、息を吹き返す。地域密着で事業を展開しつつ、その中で見つけたニーズを商品化。「LSベルハンマー」「ベルシザー」などヒット商品を連発。さらに社会福祉法人と連携し、事業を通じて授産施設利用者の自立を目指す社会貢献活動を展開している。

弥生マルシェ編集部
著者:弥生マルシェ編集部
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