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新卒も中途も採用が上手くいかない!-中小企業お悩み相談室第2回目:経営者編-

新卒も中途も採用が上手くいかない!-中小企業お悩み相談室:経営者編①-

著者:長野 恭彦 株式会社スコラ・コンサルト プロセスデザイナー

「中小企業お悩み相談室」では、中小企業や小規模事業者のような「小さな組織」によく見られる実際の悩み事をピックアップ。組織風土改革のパイオニアとして30年以上の実績を持つ「株式会社スコラ・コンサルト」が回答します。

第1回目では、女性担当者の方の「頼まれごとが多くて自分の仕事が進まない!」というお悩みにお答えしました。第2回目は、「採用が上手くいかない」とお嘆きの中小企業の経営者の方に対するお悩みに回答します。中小企業が持つべき本当の価値を考えましょう!

Q.社員の採用が全く上手くいかず悩んでいます

社員の採用に苦労しています。募集広告を出すと多少は応募があるのですが、最終的にはこちらがお断りするわけでもなく辞退されてしまいます。当然大企業よりは待遇が良くないものの、決してひどい条件とは思いません。中小企業ならではの魅力をアピールできればよいのですが、どんな魅力が今の応募者に刺さるのかが分かりません。若者の人口減少でますます採用競争が厳しくなる中、どんな手を打っていけばいいか暗中模索で悩んでいます。

A.今の応募者は賢く、メッキはすぐに見破られてしまいます

例えば採用の時期だけ頑張って、面談では自社の良いところを10倍くらいに誇張してアピールしたり、会社見学では自社の良いところを見せるよう社員に要求したりなどしていませんか? 近年のインターネット上の情報は玉石混交で、応募者はより賢くなっています。いくらそのときだけ会社の外面を良く見せようとしても、メッキはすぐに見破られてしまいます。会社の実態は、社員の表情や態度、職場の整理整頓の具合、社長の未来への熱意などに現れるからです。

企業は、メッキではない会社の「本物の価値」を見つけなければならないのです。

新卒採用における真のターゲットは誰か?

次に考えたいのは、採用活動のターゲットは誰かということです。今は大学新卒の入社式に親がついてくる時代です。一人っ子が多くなった家庭環境では、ある程度仕方がないことです。そのため、親御さんがわが子を預けて安心と感じられる会社が、人を集めやすくなっています。つまり、「新卒採用のターゲットは誰か?」と問われれば、新卒者の親御さんであり、親御さんに価値を提供しなければならないということです。

何が親御さんの安心をもたらすのでしょうか? BtoCのビジネスで、一般的な知名度が高く、会社の規模が大きくて安定している。給料も高くて、福利厚生や教育研修などの制度も充実している。これらは間違いなく「安心」という価値です。

ところが、そんな安心という価値に恵まれている会社はほんのわずかです。ましてや知名度も低く、給料もそこそこで、福利厚生制度も大企業に比べれば取るに足りない……のが中小企業です。

しかし、ないものねだりをしても仕方がありません。最近、私が注目しているのは、社員を技術的にも人間的にも鍛えてくれる会社です。これからも続く国内の長期的なデフレ経済環境の下で生き残っていくことができるのは、自分の腕とハートで人の役に立てる価値を提供できる人材を豊富に持つ会社だと考えているからです。つまり中小企業にとっては、「人材育成」こそが親御さんに安心してもらうための「本物の価値」なのです。

メッキはすぐ剥がれる。本物の価値を探そう。昨今の新卒採用は親御さんがポイント

人材育成の流れが変わってきた

人材育成といっても、多くの会社がやっているような新人教育のことではありません。私が最近注目している会社をいくつか取り上げてみます。

静岡県沼津市に本社を置く「平成建設」。この会社の「大工育成」は秀逸で、東大の大学院卒の優秀な学生からも応募があるという現象が起きています。技能だけでなく大工の精神、ものづくりの心を「平成大工マインド」と称して、平成元年の設立以来200人の大工を育ててきました。

もう1つが富裕層の家事代行サービスを営む「ミニメイド・サービス」。顧客の1年以上のリピート率が96%という高い信頼性を誇っています。新卒ではありませんが、マナーや人柄など厳しい基準で採用された家事経験豊富な主婦たちが、入社後7日間、30時間の研修を受け、合格者のみが仕事をすることを許されます。さらにその後も5段階のレベルアップ研修が課せられます。ついには人材育成のノウハウを生かすべく、整理収納アドバイザーの資格取得などの研修事業を展開するNPO法人を設立。これまでに3万人以上の卒業生を輩出しています。

専門技能と人間性を身につけるという意味では、設立80年になろうとする「トヨタ工業学園」が出色です。今までに8,000人の卒業生を輩出し、トヨタの現場リーダーとして技術と品質を支えてきました。毎年100人の中卒が入社して3年間で技能を学び、トヨタの工場に配属されます。

JRの架線工事など電気設備工事を請け負う「日本電設工業」では、中央学園という人材育成組織が1年間みっちり新卒を鍛えます。卒業後、現場での1年間のOJT期間を経て、ようやく正式に配属されます。同学園は、東京都の認定職業訓練校として民間にもサービスを提供しています。

また最近は、短期間で開業を支援する職人養成機関も話題になっています。

開校15年で既に3,500人の卒業生を輩出している「東京すしアカデミー」、香川県に本社があるラーメン店開業支援の「大和製作所」、5日間で15種類のパンが焼けるようになる「おかやま工房」。『獺祭』で奇跡的ともいえる復活を果たした「旭山酒造」も、科学的な酒造りで若い素人を立派な杜氏に育てています。

いずれも、今までであれば10年ほどのつらい修行期間を経て、ようやく独立できるのが常識とされていた職業ですが、短期間での育成を可能にしています。これらの事例が示すものは、明らかに人材育成の常識が変わってきているという潮流です。

自社の人材育成カリキュラムを作成するには

これらに共通するのは、「技術・技能の習得」と「仕事への心構え」という2つの側面にトコトン取り組んでいることです。

その背景にあるのは、人材育成こそが会社の生死を決める、という現社長または創業以来の揺るぎないこだわりです。そういう意味では「こだわりの人材育成」ということができます。それだけの信念を込めてつくり上げたものは、ミニメイド・サービスや日本電設工業のように、外販できるだけの価値を持つに至るのです。資金力があるからできるのではありません、人材育成にこだわってきたからこそ、継続的に業績を上げることが可能になり、資金力もついてきたのです。

「そんな仕組みは、いきなりやろうとしてできるものではない?」

全くそのとおりです。しかし、社長は「できる/できない」を判断基準として考えてはいけません。それは現場の判断基準であって、社長は常に「やる/やらない」で判断すべきなのです。

逆に、最初から完全な制度を狙っては失敗します。社長自らが「校長」「塾頭」になって、2~3人の寺子屋から始めればいいのです。もしも社内で人に教えることが得意な社員がいれば、彼を「マイスター」など名誉ある名称をつけて講師に任命するのも一法です。そして、毎年必ず見直して、より良いものに整えていく。信念を持ってそれに取り組み続ければ、3~5年たつと育成効果は大きくなっているはずです。

「こだわりの人材育成」に取り組む際の構築手順を書いておきましょう。

  1. 「こだわりの人材育成」の推進チームを定める
    ※リーダー:社長、講師候補も入れる(もちろん、社長が講師でもかまわない)
  2. わが社の商品を支える核となる「技術・技能」と「仕事への心構え」を定める
    ※推進チーム+αのメンバーで「技術・技能」と「仕事への心構え」の具体的な要素をたくさん出し、絞り込む
  3. 現場の知恵を余すことなく取り込んでカリキュラムとテキストを作成する
    ※最初から大作は要らない
  4. 講師を決める
  5. 新卒および中途入社を対象に開始する
  6. 1回終了したら、「良かったこと/イマイチだったこと/気づいたこと」の3点で振り返り、次回のカリキュラムとテキストに反映することを決める

人柄か、技術か?中途採用のかなり大事なコツ

中途採用においても、「技術・技能の習得」と「仕事への心構え」という2つの面でのこだわりは「売り」になります。ただ、中途採用には気をつけなければならない大切なポイントがあります。それは採用の基準です。

目先で必要な技能確保に走ったために、結果的に評判をおとしめた大手バス会社A社の採用戦略を見てみましょう。

運転手の確保が喫緊の課題であるバス業界、A社の採用基準は「技能最優先」。バス運転経験者に加えてトラック運転経験者も採用しました。同じ時期、B社の採用は「乗客への応対姿勢」を優先し、人当たりの良さなど人物重視が基準でした。大型自動車第二種免許を持っていない人には、採用後に資格取得のための研修を実施。免許取得費用は会社負担でした。

運転手の現場への配属はA社が圧倒的に早いのですが、A社の路線バスでは乱暴な運転へのクレームが増え始めます。そして、ある日事件が起きます。自転車がバスの後部に接触、しかし自転車の運転者は謝るわけでもなくバスの横をすり抜けて広い脇道へ。頭に血が上った新人運転手は、乗客を乗せたまま路線を外れてその自転車を猛然と追いかけ始めます。そして、自転車を追い詰めて運転者に土下座をさせたのです。

運転手の腹の虫は収まりましたが、会社は大変です。運転手は即日退職、会社は監督官庁への謝罪、運行管理体制の監査など余計な業務に振り回され、何よりも沿線住民の信頼を大きく損ねてしまいました。

もちろん、採用候補者が求める技術と人間性の両方を持ち合わせていれば申し分ありません。しかし、そんな人材は希少です。悩ましいのは、「技術を持っているが人間性に問題がある」、あるいは「人間性は良いが技術が伴っていない」人材が応募してきた場合です。先の事例に従うと、間違いなく後者の人材を選ぶべきでしょう。「こだわりの人材育成」を実施していれば、業務に必要なスキルは後で鍛えることが可能だからです。

人材育成の仕組みこそ中小企業が持つべき価値。業務に必要なスキルは後で鍛えられる

最後に

本気で、長期的に人材育成に経営資源を集中させる。そのために社長が肝に銘じておくべきことを3つ挙げておきましょう。

1.社員を言い訳にしない
いつの時代もそうですが、業績の低下や停滞の原因を、社員のやる気のなさや能力の低さに帰する社長にお会いすることが少なくありません。とんでもないことです。自分が社員を育ててこなかったと猛反省すべきでしょう。

2.自分の信念と自分軸(経営のこだわり)、チャレンジテーマを分離させない
「信念」は、1人の人間として生きる上でのこだわりであり、自分の言葉で自覚的に語れるまでに磨かれていることが必要です。この「信念」を、社長として「お客さまに何で貢献するか」「社員に何で貢献するか」という2つのこだわりで表現したものが「自分軸」。そして「自分軸」の具体的実践が「チャレンジテーマ」です。これら3つの要素が一気通貫の関係として、ぶれないことが肝です(下図)。

図:「信念」「自分軸」「チャレンジテーマ」

図:「信念」「自分軸」「チャレンジテーマ」

3.「やる/やらない」を判断基準にする
「できる/できない」を判断基準として考える社長や経営幹部がいます。これは現場が悩むべき判断基準であって、社長がこれで判断していては事業の発展はありません。社長の判断基準は常に「やる/やらない」しかないのです。


長野 恭彦(ながの やすひこ)

著者:長野 恭彦(ながの やすひこ)

株式会社スコラ・コンサルト、中堅・中小企業の変革のプロセスデザイナー。個人の生まれや育ちから見えてくる自分軸を核とするリーダーシップの再生と、社員間のタテ・ヨコの関係づくりから生まれるチームワークによる事業やマネジメントの改革を得意とする。現在クライアントに出向中、CCOChief Culture Officer)に挑戦している。著書『オレがやる!「負けないリーダー」の仕事術』

株式会社スコラ・コンサルト
著者:株式会社スコラ・コンサルト
組織風土改革のパイオニアとして企業・公的機関の支援に30年の実績をもち、実践を目的とした〈プロセスデザイン〉という独自の変革手法に特徴がある。「コンサルタントのいないコンサルティング会社」のスタンスを貫き、「プロセスデザイナー」が現地で現場の人たちと一緒に考える伴走型の支援を行う。本音でまじめな話ができる対話の場、職場や立場を離れてフラットな関係で行う「オフサイトミーティング」は、スコラ・コンサルトの代名詞になっている。株式会社スコラ・コンサルト ホームページ。

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